大人になることは、ときめきや憧れがなくなること? |
一点の 偽りもなく 青田あり (西東三鬼) 冒頭の俳句の「青田(あおた)」のほかにも、「青田風(あおたかぜ)」「青田波(あおたなみ)」「青田面(あおたのも)」といった季語がありました。田圃の稲が青々と成長している様子です。素敵な言葉だと思います。暑い夏空の下、青々とした稲が風に吹かれる光景には一服の涼を感じます。 さて、当方もちょうどその時、私用で東京に行っていました。東京まで3時間弱の旅です。「東京に行ってくる」と言うと、昔はステータスの高さを感じるものがありました。吉幾三の『俺ら東京さ行ぐだ』の気分です。中学校の修学旅行でディーゼルカーに乗って、初めて東京に行った時は東京のすべてに感激しました。まさしく、「おのぼりさん」そのものです。列車も「おもいで号」という名前で、昭和を感じさせるものでした。東京まで6~7時間ぐらいの旅でした。その時はそれほど長いとは感じませんでしたが、今の倍の時間です。それを考えれば、山形新幹線はミニ新幹線といえども快適です。 便利になったとはいえ、今は昔胸ときめかせたほどの東京への憧れは、もうそれほどありません。「また、東京か」といった感じです。 大人になること、便利になることは、距離感が縮まること、ときめきや憧れがなくなることじゃないかなと思います。幼い時分、家族で七日町に行くことが楽しみでした。バスに揺られてわずか30分ぐらいの距離でしたが、ずいぶんと遠く感じられたものです。修学旅行で松島や福島に行くことは異国に行ったような気分でした。でも今は、車で1時間の距離でも短く感じます。中高の時、自転車であっちこっちと遠出をしました。山形って広いなと思いました。通行人も多く、街全体に活気がありました。今は、寂しい町だなと思うほど小さく感じます。
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