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2020年01月20日

新年 節目としての「戒壇石」

 一輪の 霜の薔薇より 年明くる (水原秋桜子)

明けましておめでとうございます。令和2年が明けました。昨年の今頃は、新しい年号は何になるんだろうねという期待で、世の中が賑わっていたような気がします。
00120200120.jpg年が明けたといっても、別に昨日と変わりがあるわけではありません。また一つ年をとってしまった、というのが実感です。しかし、山形商工会議所の後藤新会頭が月報新春号で、「新しい年を迎えるのは 新しい構えがなくてはならぬ 決してただ漫然と迎えてはならぬ」という言葉を紹介していましたが、新年を迎える構え、意味を持つことが大切なのかなと思います。

通勤途中に「龍門寺」というお寺があります。このお寺、山形ではけっこう有名なお寺です。10代山形城主最上義守が「出羽の虎将」と呼ばれた嫡男義光と対立した後、和睦し隠棲、その後菩提寺となった寺です。寺の周りは鉤型の道に囲まれ、まさに戦国時代の守りの要であったことを伺わせます。
寺の入り口には立派な山門があります。山門の前に一本の石柱が建っています。何年もの間、この石柱は何なのか、そこに彫られている言葉にはどんな意味があるのかわからず、とても気になっていました。
 
石柱には、『不許葷酒山門』という句が彫られています。これまで「葷」の読みと意味がわからず、「酒を飲んでお寺に立ち入ることはできないよ」くらいしか理解できませんでした。
年末、思い立って調べてみると、句の読みは「くんしゅ さんもんに いるを ゆるさず」、意味は「くさいにおいのする野菜(ニラなど)と、酒は、修行の妨げになるので、寺の中に持ち込んではならない」だそうです。禅寺の前にはこの句を彫った石柱「戒壇石」が多くあり、修行の戒めとしているようです。
あらためてこの石柱「戒壇石」の前に立つと、この先、修業の場である寺内が神聖な場所に思えてきます。戒壇石は、俗世と神聖な場所を分ける結界石なのだそうです。

00220200120.jpg以前、山間の小中一貫校に赴任した時、保護者にお寺の住職がおられました。今も月に一度、お寺の便りを発刊されています。この便りが非常におもしろく、毎回楽しみにしています。住職は若い時分、永平寺で修行され、日本一厳しいと言われる修行体験をよく便りに書かれています。
そんな厳しい修行中であっても、時には羽目を外せることもあったそうです。昭和天皇が崩御した時、追悼法要の後、先輩寮長の「今日のような日は滅多にない。われわれも世の中、どうなっているか見ておく必要がある」の一声で、門前の旅館に部屋を借り、カツ丼やカレーを食べながら、年号が「昭和」から「平成」に変わった瞬間をテレビで見た話を書いておられました(註:ホントはいけないことだそうです)。
いったん山門を出ると、そこは俗世です。しかし、カレーは「葷」に当たるのではないかと想像してしまいます。カレーのにおいをぷんぷんとさせながら山門をくぐるお坊さんの姿を想像すると、ちょっと笑ってしまいます。

『不許葷酒山門』の戒壇石がお寺の入り口にあるように、自分の心にも旧年と別れ、新年を迎える一つの節目、区切りとしての戒壇石を置かなければと思った年頭でした。ただし、家の前には『不許葷酒山門』の戒壇石は置かないように。お酒が飲めなくなります。(2020.1.20)

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