社長ブログ

てぃんさぐぬ花

2008.07.23

3年前、沖縄に行ったのは、教え子の結婚式によばれたからでした。Mさんは、かしこくてかわいくて、ヴァイオリンを弾く、心優しい子です。もうこれはいかなければと、仙台空港から那覇まで飛んで、その日は那覇のホテルに泊まり、次の日、恩納村のホテルへ駆けつけたのでした。
ホテルまでの道中は、これがまさに沖縄のおばあだというハイヤーの運転手さん、Gさんのガイドで、楽しいものになりました。「どこからきたね? それなら時間はあるね。少し案内しようかねえ?」
万座毛など、案内してもらったいくつかもとてもよかったけれど、なによりおもしろかったのが、車中でのおばあの話でした。そのなかで、歌付きで話してくれたのが「てぃんさぐぬ花」でした。
むかし、「みんなの歌」なんかでも登場し、よくきいていた歌でしたが、おばあの歌が、心にしみるのです。車窓をすぎる景色もそうさせるのです。そしてなにより、おばあの解説がいいのです。
「『てぃんさぐぬ花』は、ホウセンカの花、それで『ちみざち』、爪の先を染めたということね。『うやぬゆしぐとぅ』は、親の言うことね、それは『ちむに』だから、肝に、まあ、心に染みるということね。ほんとに、親の言うことは大事さねえ」
「『天ぬぶりぶしや ゆみばゆまりゆい うやぬゆしぐとぅや ゆみやならん』、いい言葉だよ。天の星はかぞえることができるけど、親のいうことはかぞえきれん、ということね。私にも親がいるけれど、その私がもう親さあ。親のいうことは、数えきれんさあ」
おばあに無理を言って、沖縄言葉の歌詞と意味を何度も言ってもらって書きとめました。なんという柔らかな言葉だろうと思いました。それを、おばあの声で、おばあの抑揚できくと、涙が出るほどやさしいのでした。
%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%83%93%E3%82%B9%E3%82%AB%E3%82%B9%EF%BC%90%EF%BC%91-1.jpg
結婚式は、それこそ映画で見るような、十字架のうしろは大海原という、ホテルの教会で行われました。教会を出て、青い空と海を背に、真っ白い塔の鐘の前に立つ二人は、祝福のフラッシュに包まれました。離れて見つめる新婦のご両親の髪が、大きく風に吹かれていました。
祝宴で、お祝いの挨拶をしました。これがなかなか大変なことで、結婚式で、一番頭を悩ませることです。一応、恩師ということで、ありがたいことに、祝辞を述べなさいと言われるのです。でも、このたびは余裕です。すてきな言葉を手に入れたのですから。それは、次の機会に。

« 社長ブログ 一覧 »