身近なところにこんな風景が
2016.09.27
山寺に 降りこめられて 秋彼岸 (大橋櫻坡子)
暦のうえでは秋分を迎えました。昼と夜の長さが同じと言われますが、山形では今日26日がちょうど昼夜の長さが同じだそうです。夕方5時半にはもう日は沈み、秋の気配がいっそう感じられるこの頃です。
ところで、時々散歩する山形市の西部地区に「羽黒堂の一本杉」という一本の杉の木があります。田んぼの真ん中に立つ杉の木は、実に堂々としており、古武士然としたたたずまいは威厳と風格を感じさせます。近くにある立看板の説明を見ると、樹齢は400年とも言われ、山形城から西の富神山山頂を結んだ線上にあり、山形霞ヶ城築城の時、戦略上、城を中心にして距離と方向、目標を測る目的に植えられたと伝えられています。本当かなと思って距離を測ってみると、言い伝えどおりちょうど富神山と山形城趾の中間地点に位置していました。
この一本杉は山形市の「山形うるおい百景」という名所旧跡に指定されています。「うるおい百景」は、平成元年に山形市の市政100周年を記念して、市民から募集して選定されたものだそうです。
しかし、山形市役所や市の観光協会に問い合わせても、百景の一覧はありませんでした。山形市の芸術文化協会が平成元年に編集したガイドブックが唯一あるだけだそうです。
山形市民の一人として、どこに、どんな「うるおい百景」があるか知りたくて、市立図書館に行ってガイドブックを借りてきました。貸し出しの担当の方からは「貴重な本なので大事に扱ってください」と言われました。それほど立派な装丁の本です。中身も美しいカラー写真とすばらしい紹介文が載っています。しかも、この本の中に、昔、教えをいただいた3人の恩師の名前を見つけたときはとてもうれしくなりました。
さて、肝心の百景ですが、街の中から100の景色を選ぶことは大変だったろうなと感じさせられます。神社仏閣など名所旧跡が多いのですが、山形の田園風景や市街地から見える月山や葉山、果ては街並みや果樹園など、実にさまざまな分野から取り上げられています。よく100も選ぶことができたものだと思います。
その中でも、「羽黒堂の一本杉」は、まさに「うるおい百景」に値する景だと思います。しばしそこにたたずむと、416年前のちょうど今頃、関ヶ原の合戦の時、上杉軍の総大将、直江兼続が富神山山頂から城主最上義光が守る山形城を遠望したところ、仲秋の濃霧にさえぎられて城を発見できず、ここから「霞が城」と呼ばれるようになったという故事を思い出します。
「うるおい百景」の景観は、あくまでも最大公約数的に選定されたものでしょう。「うるおい」とは、「落ち着きのある味わい。精神面で、ゆとりがみられること」だそうです。それぞれが「いい景色だな」と思う情景が、それぞれの「うるおい百景」だと思います。
社員のみなさんは、パソコンに向かって数字をにらみ、車を運転しながら営業のことだけに考えをめぐらす毎日だと思います。ちょっと一息、身のまわりの何気ない風景に心を留めるゆとりも大切にしたいものです。(2016.9.26)