ブラックと言われる職場“学校”
2018.06.28
梅雨晴れの 夕茜して すぐ消えし (高浜虚子)
山形も梅雨入りしました。雨は嫌いです。好きな人はいないかもしれませんが、田植えが終わった後の田圃の水面に雨がしとしとと降る光景は風情を感じます。でも、今年は休耕している田圃が多く、ちょっと寂しいです。
NHKで『やけに弁の立つ弁護士が学校でほえる』(通称「やけ弁」)という、なんとも変な題名のドラマが4月から5月にかけて全6回放映されました。副題に「スクールロイヤー(学校弁護士)」とあります。新進気鋭の若手弁護士が、「いじめ」「体罰」「モンスターペアレント」「教師の過重労働」など様々な問題が多発する学校に配置され、法律を武器に教育現場の再生に向け立ち回るという内容です。
神木隆之介演ずる頭の切れる青年弁護士がなかなか痛快です。法律と理屈で、難題を次々に解決していきます。と、言いたいのですが、それほど現場は甘くありません。時には、自分自身の不登校体験や、被害者生徒の心の奥に踏み込みながら解決の糸口を見いだそうとする姿にはちょっと感動を覚えます。そこには、『ごくせん』や『GTO』のような、民放ドラマの「切った、張った」といった、刀で一刀両断するような痛快活劇ストーリーはありません。「ブラック」と言われる学校の長年溜まってきた膿を何とか取り除こうと悩み、葛藤する姿に、今の先生方の姿がダブります。
第3回は部活動中の事故をめぐり、専門外の部活動を担当している臨時教員が責任を取って学校を辞める話でした。
お付き合いのある保険会社の支社長さんが言っていました。県外に住まわれる娘さんの中学校では、毎朝7時から部活動の「朝練」があると。えー! と、驚いてしまいました。調べると、全国で4割もの中学校が朝練を実施しているようです。
2017年にスポーツ庁で実施した中学校の運動部活動実態調査をもとに、内田良、名古屋大学大学院准教授が都道府県ごとの部活動時間を算出しています。それによると、男女平均の部活動時間は千葉県が最長で週18時間50分(土日も含む)、1日平均2時間40分、最短は岐阜県で週11時間30分、1日平均1時間40分だそうです。何と、週当たり7時間、1日1時間もの差があります。
山形県は全国41位で下位に位置し、1日平均2時間ぐらいでした。平均的な数値です。基本的に、朝練はどこでもやっていません。お隣の宮城県では、今年3月に部活動ガイドラインを改定し、朝練を原則禁止にしました。当然だと思います。授業前に運動して、放課後もまた運動といった運動漬けでは、勉強大丈夫なのと考えてしまいます。しかも、早朝指導するのは学校の先生でしょ。授業大丈夫なの、健康大丈夫なの、とこれまた考えてしまいます。
今、いや、これまでも学校はブラックだったんでしょう。いじめや不登校、毎日の生徒指導や部活動、保護者対応、連日の会議、夜遅くまでの勤務や休日出勤。それを当たり前だと信じていた頃は、「すべては子どものため」という錦の御旗を自ら掲げていたのかもしれません。でも、今はその旗を少し下ろしてもいい時代に入ったんではないでしょうか。
悩めるスクールロイヤー田口。でも、決して暗いわけではありません。颯爽としています。その姿には、今日ダメでも、明日がんばろうという明るい意志が感じられ、救われます。Part2を期待したい。
<追記>
これを書いていたちょうどその時、茨城県の県議会で、教育委員会からの朝練禁止のガイドライン提案に対して、「やる気がある生徒にどう応えていくのか。本当に生徒のことを考えて方針をつくったのか」という反対の立場から意見が出され、もめにもめたそうです。いろいろな立場、意見があるなあ、とあらためて簡単には解決できない難しさを感じました。でも、今の部活動のあり方にやる気が感じられない生徒や、業務軽減、改善が強く求められている先生方のことを第一に考えてもらいたいものです。(2018.6.28)