社長ブログ

星空を見て思う

2019.11.28

 星空を 足音あゆむ 十一月 (平井照敏)
めっぽう寒くなりました。冬の足音がすぐそこまで近づいています。朝晩の寒気が体にこたえます。その分、空気が澄んで星空がきれいです。夏には見ることができなかった星が間近に見えます。
20191128001%20%28124x220%29.jpg先月、東日本は台風19号に襲われ大きな被害をもたらしました。特に、堤防決壊による浸水被害は甚大で、水につかったり全半壊した住宅は68,000棟あまりにもなります。テレビで放映される河川の氾濫、決壊する堤防、家屋を押し流し田畑をあふれつくす濁流、そのすべてが天災の恐ろしさをひしひしと感じさせます。寒さが厳しくなるこの時期の被害は堪えるだろうなと、心よりお見舞い申し上げるばかりです。
今回の台風被害で思い出すことがあります。
前にも書きましたが、今から40年以上前、最上地方の小学校の分校に新採として赴任しました。分校といっても、古い木造ながら2階建ての校舎があり、職員室のすぐ隣には渡り廊下伝いに職員宿舎が建っていました。当時としては、県内でも大きな分校でした。
宿舎の脇には幅4メートルほどの川が高さ2メートルほどの石積みの堤防にはさまれて流れていました。川といっても、普段は深さが10センチほどで水がちょろちょろと流れている程度でした。
赴任して4ヶ月ほど経った夏休み始まりの日、分校を卒業した中学生が子ども会の行事で分校の体育館で宿泊体験学習がありました。自分は次の日、職員旅行が予定されていたので早めに宿舎に引き上げ寝ることにしました。
その夜、雨が降り出したかと思うと、あっという間にバケツをひっくり返すようなたたきつける豪雨となりました。長い間、続きました。
夜中に、子ども会担当の中学校の先生から、「飯野先生、危ないから体育館に避難したほうがいいよ」と起こされました。雨戸を開け、脇を流れる川を見ると、堤防からあふれた濁流が宿舎の床下まで達し、ものすごい勢いで流れていました。土台も削られ、建物が宙に浮いている状況になっていました。急いで中学生達に手伝ってもらい荷物を移動、体育館に避難しました。まさに命拾いです。
明け方になっても雨は止みませんでした。宿舎は土台が削り取られ、斜めに傾いていました。このままにしておくと、すぐ下流にある橋に材木が引っかかって新たな被害を引き起こす恐れがある、宿舎は取り壊したほうがいい、ということで無残にも重機で壊されてしまいました。わずか4ヶ月近くの我が家でした。
 
20191128002%20%282%29%20%28124x220%29.jpgこの豪雨で担任している子どもの家の裏山が崩れました。家が土砂の下にぺしゃんこになっていました。幸い、早めに避難してけがをした者もなく、一家は本校のある地区に仮住まいすることになりました。しかし、父親は心労がたたり、避難後すぐに亡くなりました。葬儀の時、姉弟3人が涙をこらえていたことが思い出されます。
自分も住む所がなくなり、本校校舎の会議をする畳敷きの部屋に仮住まいすることになりました。職員会議をすると、部屋の片隅には布団や本が積み重なっていました。学校に居住するという経験、なかなかないものです。
4ヶ月ほどで新しい職員住宅が新築され、見違えるほどきれいな住まいで冬を越すことができました。他に被害を受けた家もなく、父親が亡くなった子どもも元気に本校に通いました。
 
あれから40年以上も経ちますが、今も忘れることができない思い出です。
被災者の方々にとって、今回の災害が「思い出」として受け止められるまでには、これから何十年もかかるだろうなと思います。
 
澄んだ空に浮かぶ星々が、少しでも被災者の皆さんの癒やしになってくれればと願うばかりです。(2019.11.28)

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