プルーブド・テクニック(proved technic) ~ 不易と流行の狭間で ~
2024.06.17
4月6日(土)から始まったNHK番組「新プロジェクトX」。18年ぶりの復活ということもあり、大きな期待を受けての放送開始ではなかったかと思います。録画中心になっていますが、毎回見ています。
やはり、心が動きます。スタッフの取材力にも圧倒されます。さすがは、探究のプロ集団です。主人公として取材される側と縁の下の力持ちとして取材する側、どちらにも感動します。テーマ曲の「新・地上の星」や「ヘッドライト・テールライト」のエンディング曲も、より一層番組を魅力的にしています。キーを上げて再レコーディングしたという中島みゆきさんの歌声が心にじんわりじんわり浸みてきます。
2000年に始まった旧「プロジェクトX」もほぼ欠かさずに見てきた記憶がありますが、印象に残っているのは「浅間山荘事件」や「VHS戦略」「マツダのロータリーエンジン開発」等々です。中でも「執念が生んだ新幹線 -老友90歳・戦闘機が姿を変えた-」は秀逸でした。山形新幹線は、1992年7月1日に開業しましたが、それを遡ること30年近くも前にすでに東海道新幹線は開業しており、その東海道新幹線の開発にかかる執念の歩みが赤裸々に語られていたのを記憶しています。
蛇足になりますが、私が学生の頃は、まだ山形新幹線はなく「特急つばさ」でした。秋田・山形-上野間を走る「特別急行列車」で4~5時間かけて東京へ、後期になると福島で東北新幹線に乗り換えだったと思います。「特急つばさ」の食堂車での「いかのポッポ焼き」、福島での「立ち食いそば」が何よりの楽しみでした。懐かしい思い出です。
後で知ったことですが、「新幹線には、未経験の新しい技術は一切使っていない」ということです。錬磨を経て蓄積されてきた『プルーブド・テクニック(実証された技術:proved technic)』を組み合わせて新幹線を創り上げたのだそうです。それは、「絶対の安全のためであった」と国鉄技師長だった島秀雄氏が述べています。
また、「『出来ない』と言うより『出来る』と言う方がやさしい。何故なら『出来ない』と言うためには、何千何百とある方法論の全てを『出来ない』と証明しなければならない。しかし『出来る』と言うためには、数々ある方法の中からたった一つだけ『出来る』と証明すればいいからである」という名言を残しています。「出来ない」とは言わない血のにじむような努力があればこその言霊ではないでしょうか。
教育の分野にも共通します。幾多の先人が実践してきた教育における「proved technic」があります。多様性を大切にしながら、新しい時代を創造してゆく時に、忘れてはならない「proved technic」を大切にしてゆきたいと願います。<令和6年6月17日 NO.7>