社長ブログ

名もなき「決まり手」をもとめて  ~ 営業という創造の土俵に立つ ~

2026.03.03

 先日、今場所の番付が発表されました。力士たちの名前がずらりと並ぶその表には、これまでの努力と、これからの覚悟がにじんでいるように見えます。番付を見るたびに、国技である相撲の奥深さに改めて心を打たれます。

 相撲には「決まり手」と呼ばれる勝ち方があり、現在、公式に認められているだけでも82種類にのぼります。押し出し、寄り切り、上手投げ…。一見すると単純な力比べに見える取り組みも、実はこの多彩な技の応酬によって成り立っています。しかも、同じ技であっても、力士の体格や間合い、タイミングによってまったく異なる表情を見せるのが面白いところです。たとえば「うっちゃり」は、土俵際まで追い詰められた力士が、最後の一瞬で相手を反転させて逆転勝ちする技です。まるで物語のクライマックスのような劇的な展開に、観客のどよめきが響き渡ります。あるいは「下手投げ」。一見不利な体勢からでも、相手の重心を見極めて一気に崩すその妙技には、熟練の勘と経験が光ります。
 こうした「決まり手」は、単なる技術の名前ではありません。それは、力士たちが日々の稽古で磨き上げた個性の結晶であり、土俵という舞台で一瞬にして繰り出される創造の証でもあります。つまり、相撲の「決まり手」とは、型でありながら、同時に無限のバリエーションを持つ「生きた技」なのです。

 この「決まり手」の世界を見ていると、ふと、営業の仕事にも似たようなものがあるのではないかと感じます。営業に「決まり手」はあるのでしょうか?

 営業の現場には、「トークスクリプト」や「ヒアリングのフレームワーク」「クロージングの手法」など、いわゆる「型」と呼ばれるものがあります。これらは、先達たちが試行錯誤の末に編み出した知恵の結晶であり、営業を始めたばかりの頃には大いに助けられるものかもしれません。しかし、実際にお客様と向き合ってみると、こうした「型」がそのまま通用しない場面に多く出くわすはずです。たとえば、あるお客様には論理的な説明が響く一方で、別のお客様には感情に寄り添った言葉のほうが心に届くこともあります。あるいは、商品説明を丁寧に行うよりも、雑談の中で信頼関係を築くことが成約につながる場合もあります。営業における「型」は確かに存在しますが、それは万能ではなく、状況や相手によって柔軟に変化させる必要があるのです。まるで、相撲の力士が相手の体格や動きに応じて技を使い分けるように、営業もまた、お客様に合わせたアプローチが求められます。
 営業においては、「決まり手」はあってないようなものなのかもしれません。むしろ、目の前のお客様に合わせて、その場で「最適なアプローチを創造すること」こそが、営業の極意なのではないでしょうか。だからこそ、柔軟な対応を可能にするためには、日々の準備が欠かせません。相撲の力士が稽古で技を磨くように、私たちも「商品研修会」などを通じて、新商品の情報や市場の動向、そしてお客様に響く「推しポイント」を学び続けています。これは、かなり前のブログでも触れたように、まさに「木こりが斧を研ぐようなもの」です。どれだけ経験を積んでいても、道具を研がなければ、いざというときに力を発揮することはできません。

 相撲の土俵と営業の現場は、どちらも一瞬の判断と準備が勝敗を分ける真剣勝負の場です。しかし、「決まり手」にこだわりすぎると、かえって柔軟さを失い、勝機を逃してしまうこともあります。相撲の「決まり手」が取り組みのあとに名付けられるように、営業の成功もまた、後から振り返って「あれが自分の決まり手だった」と気づくものかもしれません。
 成功の鍵は、決まりきった型ではなく、相手との関係性や状況に応じて生まれる「創造の決まり手」にあるということになるのでしょう。

 これから出逢うたくさんの営業の中に、まだ名もなき「決まり手」がたくさん眠っていると期待しています。それを見つける旅、創造する旅こそが、営業という仕事の醍醐味なのかもしれません。<令和8年3月3日 NO.48>

 

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