冬芽はつやつや、準備万端怠りなく
2008.02.13
あんまり天気がよくて暖かいので、樹木の冬芽の写真を撮りに行きました。もう春ですと言いたくなるような陽ざしと青空。この暖かさはこたえられないなあ。
冬芽とは、寒い地方の樹木に見られる越冬戦略の一つだそうです。ようするに、次の年の新しい葉や花になる芽を寒さから守るための工夫の一つが冬芽なのです。そのための仕組みに、「芽鱗(がりん)」と呼ばれる芽を包むものがあります。
楊枝に使われるクロモジの冬芽は、二つの玉がついた西洋の短剣のようです。春になると短剣のさきが割れてみどりの葉が伸びてきます。それを合図に、二つの玉もそれぞれ割れ、中からは、たたみ込まれていた10個ほどの黄緑色の小さな花が、そろそろと顔を出します。
ミンクのしっぽの先のような冬芽は、コブシです。やわらかなそれこそ上等な毛皮のコートを着て、暖かそうです。これから、どんどんふくらんできて、やがてコートを広げて中から真っ白なドレスをのぞかせます。
まさにうろこのような芽鱗を何枚も重ねたようなのがトチノキの冬芽です。何枚も重ねているうえに、とろとろの油を出して光っています。これはあったかそうです。一体何枚のうろこがあるのでしょう。
ということで、持ち帰った冬芽をカッターで解剖して、冬芽の中の様子と芽鱗の枚数を調べてみることにしました。我ながら物好きだなあと思いながら。
クロモジ、短剣(葉)の芽鱗は3枚、玉(花)の方の芽鱗は1枚、冬芽の中は、葉も花もすっかりできあがって、葉と花のミニチュアのようです。
コブシ、芽鱗は毛皮のもの1枚、でも中にもう一枚毛のないものがありました。それも芽鱗でしょうか、またはがくでしょうか?花びらもしっかりできていて、茶筅(ちゃせん)のようなおしべとめしべもはっきりしていました。
ところで、トチノキですが、ものすごく苦労しました。カッターでも切れないほどのべたべたの樹脂に、カッター1本台無しになり、私の手もべとべと。それでも悪戦苦闘の末、なんとか調査結果が。芽鱗は12枚、中は真綿だらけで、まだ葉らしきものはなし。
雪国の木々たちは、それぞれ自分に合った冬支度をして、花を咲かせる日のために、豊かな実りの日のために、準備万端整えているのです。