世界中の人がエイミーなら、戦争は起きないのに
2008.03.10
スペシャルオリンピックスの山形大会が終わりました。今日の山形新聞には、「力を出し切り喜び満開」の見出しのもと、はち切れんばかりの笑顔が、それこそ満開でした。
スペシャルオリンピックスを題材にしたドキュメンタリー映画、『ホストタウン エイブル2』を見たことがありました。2003年6月、アイルランドのダブリンで、第11回夏季世界大会が行われました。そのとき、スペシャルオリンピックス日本の名誉会長細川佳代子さん(山形大会でもあいさつ)が製作総指揮となり、小栗謙一監督が製作・編集した映画です。
日本の選手のホストファミリーとなったのは、ダブリン郊外のニューブリッジという小さな町の人たちでした。映画は、その町に住む18才のエイミーとその妹のリンジー、そして家族を、日本選手との交流を通して描きます。
エイミーは知的障がいを伴うダウン症です。いつも笑顔で元気いっぱいのエイミーは、自分の意志で養護学校から普通学校に編入し、将来はセレクターになるという夢を持ち、電話受付の勉強をしています。
電話が来ます。エイミーは、張り切って電話に出ます。「ハロー!」すかさず先生の声が飛びます。「エイミー、ハローだけでは駄目でしょ! 私は~です、でしょう!」何度も繰り返します。泣きながら、何度も繰り返します。できるようになります。笑顔になります。
次は、電話の保留の仕方です。電話が来ます。エイミーは、張り切って電話に出ます。「ハロー! 私は~のエイミーです。」受話器を置いて立ち上がるエイミーに、すかさず先生の声が飛びます。「エイミー、ハロー、私は~のエイミーです、だけでは駄目でしょう! ~先生をお呼びします。少しお待ちください、といってから、保留ボタンを押して、それから迎えに行くのでしょう!」何度も繰り返します。泣きながら、何度も繰り返します。できるようになります。笑顔になります。
この映画は、毎日、少しずつできるようになるエイミーと、毎日少しずつできるようになってスペシャルオリンピックスにやってきた世界中のスペシャルアスリートたちへの讃歌です。映画の終わりに、エイミーのお父さんが言います。
「世界中の人がエイミーなら、戦争は起きないのに」
山形大会でも、たくさんの「できる(able)」が生まれたことでしょう。参加したアスリートたち、そして上山高等養護学校の生徒をはじめとするたくさんのボランティア、その一人一人の「できる(able)」に心からの拍手をおくります。