地方発送承ります
2008.11.28
全国紙と「地方」のことを書いていたら、ある小咄を思い出しました。とある祝賀会でのM氏の小咄。
山形の駅前の土産物屋に干し柿が並び、ふと見ると、入り口のガラス戸に、「地方発送承ります」の貼り紙。「おやじ、今なら、『地方』は、どこだ?」「今、地方は、ほとんど東京だ」「では、中央はどこだ?」「山形だ」
今年も、干し柿の話題が新聞やテレビ、ラジオで取り上げられる季節になりました。今はつるした柿を寒風にさらし、乾燥させているころです。もうすぐ、白粉をふいて、駅前に並ぶでしょう。
上山のN2小学校に勤めていた頃のことです。学校で、親子行事の干し柿作りが行われました。包丁や果物ナイフで皮をむく子どももいましたが、ほとんどの子どもは、栓抜きのような変な形のもので、回転する柿の皮を、あっという間にむいていくのです。
この皮むき機、挑戦してみましたけれど、それはそれは難しく、柿が空中に飛んでいったり、逆に栓抜きがはね上げられて顔に当たりそうになったりと、危険このうえありません。この地区の子どもたちは、それだけ、この仕事というかお手伝いを、しょっちゅうしているのです。
柿の実は、前もって、T字のような枝をへたにつけておきます。皮をむき終わると、このT字を縄目にくぐして落ちないようにし、縄につけていきます。1本の縄に10個くらい、それを教室の窓の外につるしました。
N地区は、蔵王山の西側にあります。蔵王おろしが吹きつけ、つるした柿は甘みを増していきます。干し柿づくりのことも忘れてしまった2学期の終わり頃、2人の子どもがやってきて、「教頭先生、どうぞ!」。きれいにラッピングされた2個の干し柿をいただきました。
N地区もそうですが、上山は干し柿の名産地です。12日の山形新聞、「干し柿づくりがピーク 産地の上山にだいだい色のカーテン」、「干し柿の『カーテン』見ごろ、山形県上山市」は、19日付け産経新聞。この「干し柿のカーテン」を見に、私は毎年、N地区を訪れるのです。
関根地区の紅柿でつくる干し柿は特に有名で、贈答用として、まさに東京に、地方発送されます。この時期、干し柿とともに、ラ・フランスとリンゴも、地方発送されます。ラ・フランスは、果物の女王だそうです。「フジ」はリンゴの王様だそうです。
山形は果物王国、果物においては、そうです、中央なのです。まてよ、そういえば、米もうまい、酒もうまい、食べ物は「中央」。あんなに映画に登場する、美しい風景、景観があり、自然豊かで、それも「中央」。なあんだ、山形は「中央」じゃないか、東京が地方で。