社長ブログ

「どっぺり」のこと

2009.01.16

入試のシーズンなのですが、「ラクダイ横丁」の続きです。現実の東大赤門前の「ラクダイ横丁」で飲んでいましたら、その店のおかみさんは赤湯出身の山形県人でした。もう盛り上がってしまって、教材『ラクダイ横丁』の話をしました。
「いるいる、ヨシムラさんみたいな学生、たくさん。飲み歩いて落第するのは、ここでは少ないけど、アルバイトが本業になっちゃったり、どうしても学費が続かなくなったりしてさ」「ラクダイ横丁はほかにもありますかね?」
「大学のある街には、みんなあるんじゃない? 山形にもあると思うよ、ラクダイ横丁」というおかみさんのことばに、思い出しました。山形にもあったのです。山形市の七日町、済生館をまっすぐ東に上った通りがそうでした。私が学生のころにも確かにあり、「どっぺり」と呼ばれていたのです。「どっぺり」とは落第のことです。
カウンターばかりの小さな店が所狭しと並び、その1軒1軒に、客があふれていました。学生もいましたが、大学の先生や県庁、市役所の役人が多かったようです。私も、ゼミのT先生によく連れて行ってもらいました。今は駅前に移った居酒屋Hです。
山形の文化人が集まるというその居酒屋で、T先生は遅くまで飲んでは語り、語っては飲んでいました。小さな店なので、お客が来ると、「もう君たちは帰りなさい」といいながらカウンターの奥に引っ込み、また飲み始める先生でした。店の脇の小道の先は小さな流れであり、それが御殿堰だったのですが、今もその流れだけは時々夢に出てくるのです。
東京のラクダイ横丁で山形のラクダイ横丁を思い出しながら、山形のラクダイ横丁、つまり「どっぺり」の教材研究をしなければと、飲みながら考えたのでした。帰り際におかみさんに、「授業で子どもたちに見せたいのでマッチをください」とたのみました。おかみさんは山ほど持たせてくれましたが、子どもたちに見せるものは1つしかいらなくて、残りは理科室のマッチとなりました。
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山形に帰って、さっそく「どっぺり」の教材研究にでかけました。もうみなさまご存じの通り、「どっぺり」は今はなく、きれいな町並みとなりました。夢に出てくる流れも見えなくなりましたが、暗渠(あんきょ)となり、今は済生館の北側で顔を出し、そこは御殿堰中央親水広場になっています。
さて「どっぺり」です、居酒屋Hのママさんは、「ほんとによく来てくれていましたね、T先生は。K先生(私のことです)もおぼえていますよ。それから、O君も。うらの川で立ち小便をする人がいて、困ったもんでした。ところで、先生、うちの息子…」
居酒屋Hの息子S君は、私が教育実習にいったクラスの子どもだったのです。

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