詩の言葉
2009.02.06
校長をしていたY小学校から、卒業生にはなむけの言葉を書くように依頼が来ました。ありがたいことです。私が学校を去ってから4年も過ぎているので、卒業生にどのような言葉がもっともふさわしいのか、悩んだ末に、次の詩を贈ることにしました。
自分の感受性くらい
ぱさぱさに乾いてゆく心を
ひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて
気難かしくなってきたのを
友人のせいにはするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか
苛立つのを
近親のせいにはするな
なにもかも下手だったのはわたくし
初心消えかかるのを
暮しのせいにはするな
そもそもが ひよわな志にすぎなかった
駄目なことの一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄
自分の感受性くらい
自分で守れ
ばかものよ
ご存知、茨木のり子さんの詩です。去年の2月26日号、『倚りかからず』に書きましたが、山形ゆかりの詩人です。「人のせいにはするな」「近親のせいにはするな」「暮しのせいにはするな」「時代にせいにはするな」と厳しいお言葉。「ばかものよ」とまでいうか。
でもこれは、読み手に言っているのではありません。茨木さん、自分に言い聞かせているのです。自分を叱っているのです。そして読み手もまた、読んで自分を叱るのです。私も、この詩のおかげで、幾度となく、「ひとのせい」にしたくなる自分、「時代のせい」にしたくなる自分から逃れました。子どもたちにもいつか、そうなってほしいと思うのです。