詩の言葉 2
2009.02.10
卒業生にはなむけといえば、工藤直子さんの詩を贈ったことがありました。
あいたくて
あいたくて
だれかに あいたくて
なにかに あいたくて
生まれてきた──
そんな気がするのだけれど
それが だれなのか なになのか
あえるのは いつなのか──
おつかいの とちゅうで
迷ってしまった子どもみたい
とほうに くれている
それでも 手のなかに
みえないことづけを
にぎりしめているような気がするから
それを手わたさなくちゃ
だから
あいたくて
Y小中学校にお世話になっていたときのことです。卒業式が終わった校長室に、2人の卒業生がやってきて、「お世話になりました」といって、詩集を2冊。工藤直子さんの『のはらうた』ⅠとⅡでした。それで工藤直子さんが、ますます好きになりました。
パティシエになるといっていたSさんは、手のなかの「みえないことづけ」だったのでしょうか、洋菓子店につとめました。そして、にぎりしめていたもう一つの「みえないことづけ」だったのでしょうか、すてきな彼と結婚し、もうすぐ母親になります。
「みなさんは、『あいたくて だれかに あいたくて なにかに あいたくて 生まれてきた』のです。『それが だれなのか なになのか あえるのは いつなのか』今はわかりません。でも、にぎりしめている手を、そっとひらいてみてごらん。『みえないことづけ』があるでしょう。それで、『あいたくて』、手がむずむずするのです」
「その『ことづけ』がなんだかわかり、『あいたくて』がかなう、その日のために、今のうちに、心と体を、大きく、やさしくしておきましょう」とはなしました。