社長ブログ

「こころ旅」に癒やされる

2017.07.27

 打水や 塀にひろがる 雲の峯 (村上鬼城)
NHKテレビBS放送の「にっぽん縦断 こころ旅」が好きです。多分みなさんもご覧になったことがあると思います。
俳優火野正平さんが愛車チャリオに乗って日本全国を旅して回る番組です。ただの旅番組と違うのは、「忘れられない風景」や「心に刻まれたふるさとの情景」など、視聴者から寄せられた手紙を紹介しながら旅が進められることです。1回の旅が40日から60日にも及ぶもので、御年68歳になる正平さんにとってはかなり過酷な旅です。
話はそれますが、火野正平といえば、たいへん失礼ながら女好きな、生意気な俳優という印象を持っていましたが、この番組を見始めてから「なかなかなこの人おもしろいな」と印象が変わりました。
番組がスタートした当初は「火野正平」と呼ばれることもなく、「真田広之」とか「役所広司」など、似ても似つかぬ二枚目俳優の名を呼ばれることが多かったのですが、7年目ともなるとさすがに「火野正平」という本名が定着したようです。旅先では「正平さ~ん!」とあちこちで声を掛けられます。
番組ではいつも自然体で、飄々とした人柄にすっかりファンになってしまいました。何より、彼の言葉に表れる感性の豊かさには驚かされます。幼い子どもには心優しく、若い女性には口説くように、若くない女性にはそれなりに言葉を掛けています。
015%20%28230x173%29.jpgさて、「こころ旅」が始まって7年目となる今年の春の旅は、四国の高知を出発して北海道をめざす、まさに日本縦断の旅になっています。何よりうれしかったのは、6月の最終週の舞台が山形県だったことです。しかも、第1日目が昔勤めた山辺町作谷沢の湧水で、手紙を書かれた方は山形市内の小学校を2年前にお辞めになったI校長先生でした。
作谷沢には湧水が名前が付いているだけでも12あります。中でも畑谷にある七番水「弁財天」は水量豊かで、コーヒー用に何回か汲みいったことがあります。
「こころ旅」では、その中の一つ五番水「萬年水」を訪ねる旅でした。おいしそうに湧き出る清水を飲む正平さんですが、わたしが赴任していた頃は子ども達から「先生、あそこの水は大腸菌が多いから飲まない方がいいよ」と言われていましたが…。
湧水の里「作谷沢」にある作谷沢小中学校。わたしが赴任した12年前は、小中合わせて33人の児童生徒数でしたが、今年度はちょうど半分の16人のようです。作谷沢は昔から教育熱心な地域で、豊富な杉材の取り引きで得た果実を奨学金にして教育の振興に努めてきたと聞いています。
おかげで山形市内からは30分あまり奥まった山間に入らなければならない地域ながら、多くの人材を輩出してきました。輸入木材が主流になった今も、地域の教育振興にかける思いはたいへん強いものがあります。
学校に赴任した時、驚いたのは子ども達、特に中学生の自信に満ちた姿勢、態度でした。僻地の子どもは物おじして、大きな声で話すことができないといった先入観は瞬く間に雲散霧消。人のことを思う気持ちも強いけれど、何より自分自身がしっかり生きようとする思いが強く感じられました。それは、作谷沢の赴任された学校教職員たちによって連綿とつながれてきた作谷沢の子ども達に対する思い、願いがこめられた教育の歴史だと感じました。また、先輩から後輩へと受け継がれてきたよき伝統でもあると思いました。
017%20%28173x230%29.jpg自信にあふれ、力強く生きようとする子ども達と過ごした1年間は教員生活の宝物になりました。
わたしはたった1年しか勤めることができず、また教育行政の場に戻りましたが、地域の方々からはずいぶんと不信を買ったと思います。自分自身から異動を希望したわけではありませんが、10年以上経った今も何か後ろめたい思いが残っています。
I校長先生のように正平さんに手紙を出したわけではありませんが、坂道を自転車で必死に登る姿に作谷沢と子ども達への感謝の思いを託したような思いです。
<追記>
3月にスタートした2017年春の旅も、先週末、ゴールの北海道北見市に「とうちゃこ」。無事、春の旅を終えることができたようです。正平さん、お疲れ様。秋の旅を楽しみにしています。(2017.7.27)

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