社長ブログ

忘れられない日 3.11

2020.03.11

3月11日は忘れられない日です。あれから9年経ちます。
3年前の平成29年3月11日。朝6時40分頃。県庁に向かう車の中でラジオ(NHK第1放送)から流れる東日本大震災に関連する番組。その中で、ある1冊の本が紹介されました。「16歳の語り部」という本です。震災当時、東松島市立大曲小学校の5年生だった3人が、高校生になったときに、封印していた震災の体験をようやく語り出した内容を綴った本です。
震災発生から報道される内容は、そのほとんどが大人の目線からのものでした。しかし、同じように心の傷を受けた子ども達の目線からの報道はほとんどありませんでした。「復興に懸命にがんばっている大人の邪魔になるから」「話題にすることで、家族を亡くした悲しみを再び呼び起こしてしまうのではないか」などの気遣いから、自分の思いや苦しみを語ることはやめようと心に誓い、長く自分の心に蓋をしてきた子どもは多かったのではないでしょうか。
この本の3人も、心に蓋をし、じっと沈黙を守ってきたのでした。高校生になって、堂々と震災体験を語り、少しでも今後の防災に役立てられればと活動する他の高校生との出会いを通じて、「体験を話してもいいんだ」と心を解放し、それを契機に体験を語り始めたのでした。
私が、この本の中で一番衝撃を受けたのは、著者の一人、雁部那由多さんの体験です。地震発生後、いったん家にもどったのですが、すぐに家族とともに大曲小学校へ避難しました。3階の図書館に避難したのですが、ガラス片などで血だらけになった内履きを履き替えるため、置きっ放しにしていた新品の靴を取りに、一人で昇降口に行った時です。どす黒い大きな波が、横から押し寄せました。目の前を大人が5人流されていきました。その中の一人の男性が雁部さんに向かって手を伸ばしてきました。届くかもしれない距離。しかし、「この手をつかんだら、自分も死んでしまう」と直感し、目をそらし、口をグッとかみしめ、振り向き、階段をかけあがりました。この辛い体験を、雁部さんは誰にも語ることができず、高校生になるまでしまい込んでいたのです。
昨日(3月10日)インターネットに20歳の大学生になった雁部さんの記事を見つけました。本を出版してから、あの手を伸ばして流されて行った男性の遺族と会ったことが書かれてありました。本を偶然手に取った遺族が、「うちの人ではないですか」と雁部さんに連絡をとり、服装や状況が一致したそうです。遺族の言葉に雁部さんは驚きを隠せませんでした。「きっとあなたが最後に見たんですよね」「(このことを)語ってくれてありがとう」という感謝の言葉だったのです。贖罪の気持ちを持ちながら体験を語り続けてきた自分の心が、その言葉によって少しだけ軽くなったそうです。
昨年は、偶然にも振替休日。大雨の中、災害ボランティアで活動した「亘理町」と「岩沼市」で3月11日を迎えました。今年は山形市で3月11日を迎えます。私にとって3月11日は、9年前から、生き方を考える大切な日となっています。(2020.3.11)

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