「あいさつしたらクマだった」
2021.07.01
令和3年6月22日の山形新聞に大変興味を引く「見出し」を見つけました。
その見出しは「あいさつしたらクマだった!」です。
記事の概要は、6月21日午前7時45分頃、小国町叶水地区で登校途中の児童たちが、道路に人のような姿を見つけてあいさつしたところ、クマだったというものです。幸い、児童たちに怪我はなく、保護者を通じて小国警察署に届け出たそうです。
私も似たような経験をしたことがあるので、「やっぱりそうだよね!」「間違えることはあるんだよね!」と、とても親近感を覚えました。
10年程前、私が山辺町西部の山の学校「鳥海小学校」に勤務していた最初の年のことです。5月の連休直後に、全児童参加の野鳥観察会が行われました。講師の先生も日本野鳥の会山形支部から来ていただく本格的なものです。午前9時から約2時間、学校から鳥海山(山辺町の)中腹までの山道をゆっくり進みながら、鳥がいると立ち止まって観察するというものです。
私は、児童の最後尾を、邪魔しないようについて行きました。鳥海山の中腹に入ると、全員が立ち止まり、双眼鏡で講師の先生が指差す先にいる鳥を見ていました。集団が次のポイントに動き出しましたが、3年生のK君と私はそこにとどまり、しばらく鳥を見ていました。約1分後、集団に遅れすぎてはいけないと、双眼鏡で見るのをやめて、集団の方へ歩き始めた時です。道の下、約3mほど離れた場所に、かがんで山菜取りをしている人の背中を発見しました。
その日は、連休明けとは思えないほど肌寒く、私は中綿入りのウインドブレーカーの上下を着ていたほどです。山菜採りの人も、ダークブラウンのフリースを着ていました。
また、学校に赴任したばかりの新参者の私は、地域の方々に失礼があっていけないと、学区内で人を見つけると、誰なのかわからないまま、積極的に大きな声で挨拶をしていました。
「こんにちわ!」山菜採りの人に向かって大きな声で挨拶をしました。それに気づいた山菜採りの人は、かがんでいる姿勢から立ち上がり、こちらを振り向きました。
「やばい! カモシカだ!!」(結構大きめのりっぱな体格です)
襲いかかってくるのではないかと緊張しましたが、カモシカはゆっくりと元の方を向き、静かに下の方に歩き始め、茂みの中に消えていきました。
すぐに集団に追いつき、児童や先生方に、今あったカモシカとの遭遇事件を話しましたが、信じてもらえませんでした。唯一の目撃者であるK君からも証言してもらい、なんとなく信じてもらえたような形で一応決着しましたが、カモシカに挨拶をしたという嘘くささは払拭されません。
数日後、町内の校長会でも、早速、カモシカとの遭遇事件の話をしました。校長先生方はニコニコと聞いていましたが、カモシカへの挨拶を信じている雰囲気はなく、隣山の小学校の校長先生からは「阿部先生。話を盛っていません?」というお言葉をいただいてしまいました。
クマへのあいさつを、疑いもなく信じてもらった児童の皆さんをうらやましく思います。
(写真:6月20日。天童市舞鶴山の愛宕沼のハナショウブ。ほぼ満開です)