多角的に見る大切さ
2022.11.01
弊社では、YBCさんと共同で「YBC読書感想文『本の森たんけん』」という、平たく言えば読書感想文のコンクールを毎年実施しています。お陰様で、今回で55回目を迎えました。毎年、県内の多くの皆様から応募いただいておりますことに、改めて感謝申し上げます。
さて、今回の「YBC読書感想文『本の森たんけん』」で、中学生部門の『昔話法廷シーズン5』という本に対する感想文が81件で最多でした。小学校から高校生までの全25冊に対する総応募数が756件ですので、この1冊で全体の10.7%を占めるという圧倒的な数字です。
この『昔話法廷』シリーズは、NHKのテレビでも放映されたのでご存じの方もいらっしゃると思いますが、『シーズン5』の内容を簡単に紹介すると、桃太郎が鬼退治と称して、鬼を30人以上殺傷し、鬼の財産を奪ったとして「強盗殺人罪」で法廷で裁かれるという内容です。
多くの日本人が、幼少の頃から親しんできた桃太郎のお話は、主人公である桃太郎が悪い鬼を成敗する正義のヒーローの話として、そのことに何の疑いや違和感も持たないで今まできたと思います。その、ある意味「常識」を逆手に取り、鬼の立場から考えてみたという発想がこの本の面白いところです。
特選に選ばれた生徒さんの感想文には、桃太郎と鬼の立場だけではなく、それぞれの家族、犬・猿・雉、村人、他の鬼たち、そして生い立ちなど、様々な視点から、多角的に見る大切さが述べられていました。
私は、この本と感想文から考えさせられたことがあります。
実際に目撃していないことの多くは、他人からの情報です。マスメディアの言うことに誤りはないだろうと、ある意味、盲目的に信じ切っています。多くの人々は、マスメディアによって、マスメディアが伝える方向へ考えが向けられてしまいがちです。過去の歴史が示しているように、最悪の事例は、マスメディアが独裁者やその取り巻き連中に掌握され、プロパガンダと情報操作で人々が扇動され、悲惨な戦争へと向かっていったことです。
「それは昔の話でしょう。今はネット社会だから大丈夫」と言う人もいると思います。個人であっても、自由に発信できるネットは、実際、世界各地で、自由や人権を脅かす体制に立ち向かって、一方的な報道に風穴を開けている存在として、しばしば報道されています。様々な情報源を持つことは悪いことではなく、むしろ必要なことです。しかし、色々な情報を誰もが簡単に発信し、瞬間的に拡散されるネットは、フェイクをはじめ新たな危険性も合わせ持っています。マスメディアであっても、ネットであっても、一部の情報だけを鵜呑みにすることは危険です。
加えて、最近、ネットを見ていて要注意と思うこと。それは、AIがネットを見ている人に合わせ、好みの情報をどんどん勝手に送ってくることです。そして、見ている人が、画面いっぱいにあふれている「それ」を、常識や世論であると勝手に思い込んでしまうことです。
くり返しになりますが、一方からの情報だけで決めつけてしまうのではなく、様々な情報を収集し、多角的に見ることを怠ってはいけないということ。これからはますます大切になってきます。
写真 1960年代と思われるファンタとコカコーラの看板(両所宮付近)10月28日8:30撮影