社長ブログ

羅生門のような

2008.05.13

立夏も過ぎて、暦の上では夏だと書いた次の日から、毎日寒い日が続いております。みなさま、風邪など引いていないでしょうか。気温の変動がこうも激しくては体が追いついていきません。みなさま、お大事に!
タカネバラとヒメサユリのことを書きましたが、またまた花の話。この時期、とても変わった花が咲いています。「ラショウモンカズラ」という植物です。漢字では、「羅生門蔓」と書きます。「蔓」は「つる」のことですから、「羅生門のようなつる性の植物」ということでしょう。でも、「羅生門のような」とはどんなものでしょうか。
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植物の名前の由来を説明している図鑑として、『牧野新日本植物図鑑』が有名です。それによれば、「羅生門蔓の意味で、太い花冠を京都の羅生門で渡辺綱(わたなべのつな)が切り落とした鬼女の腕になぞらえていったものである」とあります。
「なぞらえていった」とありますが、誰がそう言ったのかは今となっては分かりませんが、この花を見て、羅生門の物語を思い出し、切り落とした鬼女の腕を連想した人の想像力に感嘆します。
羅生門のお話はいろいろあります。有名なものは、芥川龍之介の『羅生門』、黒澤明監督の映画『羅生門』、そして、この植物の名前の由来となった渡辺綱の『羅生門』があります。
渡辺綱は平安時代の武将で、大江山の酒呑童子や羅生門の鬼を退治したという逸話が残されています。
渡辺綱の武勇は、昔から謡曲や本になったりしてずっと語り継がれてきたのでしょう。今の子どもたちがイチローに憧れるように、昔の子どもは渡辺綱が羅生門の鬼とたたかう錦絵なんかを宝物にしていたのでしょう。だから、昔の人は、「羅生門のような」といえば、「ああ、渡辺綱の鬼退治か、なるほど、そう言われればその腕にもみえるなあ」と思うのでしょう。
でも、今の人は違うのです。「羅生門のような」といえば、「羅生門的アプローチ」なのです。この言葉は、アメリカ・イリノイ大学の教育学者、アトキン先生が、黒澤明監督の『羅生門』をみてつくり出した言葉だそうです。
「ああ、ものごとはクロサワのごとく多様に見なければならない。羅生門は一つだけれど、前から見たり、後ろから見たり、上から見たり、下から仰ぎ見たり、見る角度によって全く違うものに見えてくる。子どもも、見る者の立ち位置や見る角度、見る視点等によって見え方がちがうのだ!」
「羅生門のような」見方による教育、「羅生門のような」見方でいっぱいの学校、「羅生門のような」見方のできる教師。そうです、山形の子どもたちは幸せです。

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