社長ブログ

せんこう花火 2

2008.07.05

教科書の写真に負けない写真を撮ったぞ! と、元気に写真屋に行ってみたけれど、残念。どうにも使えない。改めて撮影会。繰り返すこと数回。
そのうちに、火をつけると「火はすぐ紙に燃え移って、ぷすぷすといぶりだす」の「ぷすぷす」を写真に撮れないだろうかと思いました。「火の球をよく注意して見ると、全体がぐつぐつとにえたっていて」の、「ぐつぐつとにえたっていて」の写真は撮れないだろうか。
写真を撮りながら、子どもたちに気をつけさせたい言葉、読みとらせたい事実が見えてきたのです。中谷さんの、本当に美しい詩のような表現が、見えてきたのです。
「何か強い力が、火の球の中で渦巻いている」「小さいほうだんが、目に見えぬ空中の何ものかにしょうとつして、くだけ散るように爆発する」「松葉火花は、その美しい姿の頂点に達する」…。
昔の教科書を物置から探し出して見ているのですが、構成も見事なのです。大きなまとまりが3つあり、1つ目は、書き出しです。2つ目が花火の説明、3つ目が、日本独特の花火とそれを作り出した日本人への賛辞です。
美しい詩のような表現、見事な構成、ここまでくるともう決まりました。こうして、ああして、こうしてと、やりたいことがどんどん出てきて、これはおもしろい授業になるぞと、うれしくなりました。
何回かの夜仕事の末に完成した写真を黒板の上部に貼って、それに対応させて表現を書き出し、写真を使いながらその表現を子どもたちに豊かに捉えさせていく、…、黒板の使い方も見えてきました。うまくいくぞ! そして、授業の最後は、こうです。しゃれているのです。
花火に火をつけてから消えるまでの様子が分かるように、写真と表現の板書が完成したところで、黒板全体を示しながら、子どもたちに言うのです。「これを、中谷さんは何と言っているのですか?」。子どもたちは言うのです。「せんこう花火の音楽です」と。
2つ目の段落の最後に、中谷さんは、「それで、せんこう花火の音楽はおしまいになるのである」と書いています。中谷さんの師、寺田寅彦はこう書きます。「実際、この線香花火一本の燃え方には『序破急』があり、『起承転結』があり、詩があり、音楽がある」。二人とも、せんこう花火を、音楽にたとえているのでした。
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公開授業がうまくいったかどうかは、秘密です。でも、それ以来、私はせんこう花火が大好きになり、毎年必ずやることにしているのです。そして、中谷宇吉郎の名を聞けば、せんこう花火を思い出し、寺田寅彦を思い出し、「せんこう花火」の授業を思い出すのです。
教材研究は、こんな風におもしろいのです。教材研究の仕方を教えてくれた先輩の顔が浮かびます。感謝です。山形の先生方は、みんな、教材研究が大好きなのです。
雪の里情報館の中谷宇吉郎特別展は、21年3月15日まで開かれているそうです。

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