詩の言葉 3
2009.02.16
詩の言葉は、短いなかで雄弁です。ずっと昔、先輩が詩を読む授業を見せてくれました。『にくのつなわたり』という、児童詩、子どもが書いた詩でした。
にくのつなわたり
かあちゃんが
ぼくのちゃわんに、
こっそり肉をいれたので、
にいちゃんにゆずってやった。
にいちゃんは
とうちゃんにやった。
とうちゃんはうるさそうに、
かあちゃんへかえしたら、
かあちゃんはこまった顔をしたので、
ええ、にくのつなわたり、
これにておわり
と、ぼくが大きな声でいったら、
みんなが大わらいした。
かあちゃんがはずかしそうに
わらいながら食べだした。
5・6年複式の教室で行われた先輩の授業は、それは見事なものでした。子どもたちは、この短い詩から、家族愛、家庭の温かさや、この4人家族の性格や人柄、年齢や服装、食事をしている部屋や座っている様子、食べている料理まで読みとっていました。
詩に限らないのですが、文章を読むということは、想像し、創造することです。この詩をお読みになったみなさんは、もう、この家の家族構成は分かりましたね。4人です。でも、5人だと強硬に主張する子どももいます。おばあちゃんがベッドで寝ているのだと。
それはそれでよいのです。読み手一人一人が創造することですから。この日の献立はすき焼きです。もちろん、焼き肉だという子どももいます。ステーキだという子どももいます。それでよいのです。いろいろな読みとり方があることを知ることが大事なのですから。
「かあちゃん」も「とうちゃん」も、本当は肉が大好きなのです。でも、「かあちゃん」は肉がきらいなのだという子どもがいます。ぼくのちゃわんに「こっそり」いれたから。「とうちゃん」も肉がきらいだという子どももいます。「うるさそうに」かえしたから。
このように、詩の言葉から、子どもたちは自分なりのストーリーを作っていきます。そのストーリーのつくり方を子どもたちに教えていくのです。私は、この詩で授業をするのが大好きなのです。