3・11 一回りしたうさぎ年
2023.03.11
今年も3月11日がきました。
東日本大震災が発生した2011年(平成23年)はうさぎ年。今年、2023年(令和5年)もうさぎ年。十二支が一周し、12年という月日が経ちました。12年というと長く感じるかも知れませんが、私は「まだ12年しか経っていない」という気持ちのほうが遙かに上回ります。
あの日、午後2時46分。中(なか)中学校の三年生を送る会の最中に発生した、経験したことのない長い時間にわたる強烈な揺れ。丸一日続いた停電。品物が全くないスーパーの陳列棚。ガソリンを求めての夜中からの行列。などなど。
2ヶ月後に災害ボランティアで行った被災地の光景。重油の匂いが立ちこめる砂漠のような亘理町長瀞地区。相反するように、泥にまみれた漂流物が引っかかったビニールハウスやヘドロがたまっているドロドロの田んぼが広がる岩沼市蒲崎地区。などなど。
まるで昨日のように思い出されます。
しかし、経過した12年の月日をどう思うかは人それぞれです。でも、これって「どうなのかな?」と思える出来事を今年の3月11日は取り上げざるを得ません。
一つ目は、政府が防衛費増額の財源として、所得税に2.3%上乗せされている「復興特別所得税」のうちの1%分を防衛費に充てるという案を出したことです。しかも、復興のための総額は変わりないと言うために、2037年までの期間であったあったはずの、この「復興特別所得税」を、20年あまり延長することでつじつまを合わせようというのですから、ちょっとびっくりです。この案が実行されれば、毎年の復興予算が現在の約半分になるわけなのですが、これを考えた人は、それでいいと思っているのでしょうか。「被災地は復興した」と思っているのでしょうか。
12年前の3月11日に発生した大災害から立ち上がるために、お互いが助け合わなければならないと、多くの人の理解のもとに始まった「復興特別所得税」だと思います。使途は「復興」であり「防衛費」ではありません。「復興特別所得税」を隠れ蓑にして、増税感をなくそうというやり方に、これって「どうなのなか?」と思ってしまいます。
二つ目は、原子力発電所(以下「原発」)問題です。政府は、東京電力福島第1原発事故以来とってきた原子力政策を転換し、原発を最大限活用する方針案を出しました。具体的には、原発の新設や増設を想定しないとしてきましたが、廃炉となった原発の建て替えを念頭に進める案です。また、原発の運転期間を最長60年としてきましたが、運転停止期間を除外し、実質60年を超えて運転できるようにする案です。今現在、電気代は高騰を続け家計を直撃しています。多くの人々が負担を感じています。このタイミングを計ったかのような原子力政策の転換案。しかし、日本世論調査会が3月5日に発表した調査結果は、「60年超運転」反対71%、「政策説明不十分」92%という結果でした。福島では、今なお東京電力福島第1原発事故に苦しんでいる人々が多くいます。にも関わらず、議論を十分経ないで方針案が出てくることに、これって「どうなのかな?」と思ってしまいます。
12年も経つと、「喉元過ぎれば熱さを忘れる」のでしょうね…。
写真 快晴の3月5日 雪解け水を満々と湛え、力強く流れる最上川(谷地橋にて撮影)